歯科医院のホームページに症例写真を載せるには、写真1組ごとに治療内容・治療期間と回数・費用・主なリスクと副作用の説明を付けることが条件です。[1][3]説明のない写真や、術後だけの写真も広告できません。説明をリンク先や極端に小さな文字で済ませる形は認められず、加工した写真は厚生労働省の事例解説書が虚偽広告の例に挙げています。掲載には、患者さん本人の同意も原則として必要です(2026年10月29日確認)。[5]
歯科のホームページに症例写真は載せてよい?
歯科医院のホームページには、写真ごとに決まった説明を付ければ症例写真を載せられます。[1]写真だけを載せる形は、医療広告として認められていません。
根拠は医療法施行規則の第1条の9第2号です。ここで禁じられているのは「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等」の広告です。厚生労働省の医療広告等ガイドライン(2026年3月30日最終改正)は、これを「いわゆるビフォーアフター写真等」のことだとしています。[1]そのうえで、次の一文で例外を置いています。
術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない。
出典:医療広告等ガイドライン 第3-1 1(7)
症例写真とは、ここでは治療の前・途中・後の口の中や口元を写した写真で、治療の結果を見せる目的のものを指します。説明のない症例写真がなぜ禁止なのか、ガイドラインは「個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なる」ためと説明しています。[1]同じインプラントでも、骨の量や歯ぐきの状態で仕上がりも期間も変わります。写真だけでは、見た人が「自分も同じ結果になる」と受け取りやすい、という考え方です。
症例写真に当たるのは、口の中を写した写真だけではありません。治療の前後を比べる目的で載せるのであれば、口元を含む顔の写真、歯並びの模型の写真、エックス線の画像を並べたもの、治療の経過を順に並べた写真も、同じ考え方で扱うのが安全です。ガイドラインは、写真に限らず「写真等」と書き、事例解説書はイラストも対象としています。[1][3]
見落としやすい点が3つあります。
- 術前だけ・術後だけの写真も同じ扱いです。厚生労働省のQ&A(Q2-8)は、手術前のみ又は手術後のみの写真も「患者等を誤認させるおそれがある治療効果に関する表現に該当するため、広告できません」としています。[2]仕上がった口元の写真1枚でも、説明がなければ対象です。
- 治療の効果は、もともと広告してよい事項に入っていません。ガイドラインは「治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため」、限定解除の要件を満たさない場合は術前術後の写真等を広告できない、としています。[1]
- イラストも対象です。事例解説書は、術前又は術後のイラストにも、通常必要とされる治療内容・費用や主なリスク・副作用の情報を付ける必要があるとしています。[3]
医療機関のウェブサイトは、2018年6月1日に施行された改正医療法で、チラシや看板と同じ広告規制の対象になりました。[2]それより前に作った「症例紹介」のページが、説明のないまま残っていないかを最初に確かめます。広告の決まりの全体像は、業種をまたいで比べた業種別の広告規制の早見表にもまとめています。
症例写真に付ける「詳細な説明」とは何を書くこと?
歯科の症例写真に付ける詳細な説明とは、写真1組ごとの治療内容・治療期間と回数・費用・主なリスクと副作用のことです。[3]厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」が、インプラントの症例を例に改善例を示しています。
インプラントの症例紹介:説明の付け方
前と後「インプラントで見違えるほどきれいに。治療費は1,500,000円~」期間・回数、総額、リスク・副作用がない
- 症例30代女性・左下の奥歯1本
- 治療内容インプラントを埋め、人工の歯を被せた
- 期間・回数約6か月・10回
- 費用自由診療・総額と内訳
- リスク出血・腫れ・痛み・神経麻痺など
- 問い合わせ電話番号・メールアドレス
厚生労働省の事例解説書(第6版)の改善例をもとにした架空例です。金額・期間は実際の相場ではありません。
| 項目 | 事例解説書の改善例(インプラント) | 足りないとされた例 |
|---|---|---|
| 症例の概要 | 30代女性。事故で失った左側臼歯のインプラント治療 | 「インプラント治療の症例」という見出しだけ |
| 治療内容 | 歯根破折を起こした臼歯にかわり、顎の骨にインプラントを埋め込み、人工の歯を被せた | 「審美面・機能面ともに回復しました」だけ |
| 治療期間・回数 | 約6ヶ月間、10回 | 書いていない |
| 費用 | 自由診療である旨、総額1,100,000円(検査・診断、手術関連処置費用等を含む)、インプラント埋込・上部構造 350,000円/1本 | 「治療費は1,500,000円~」だけ |
| リスク・副作用 | 出血、腫張、疼痛、青痣、神経麻痺、補綴物の脱落、破折、インプラント体の破折、咬合違和感、インプラント周囲炎等 | 書いていない |
出典:厚生労働省『医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)』(22)ビフォーアフター写真(2026年3月作成・2026年10月29日確認)。金額・期間は解説書の例示で、実際の相場ではありません
解説書は、広告できない例として3つの形を並べています。[3]
- ビフォーアフター写真のみが掲載され、説明が一切ないもの
- 説明はあるが、治療内容・費用等の情報が十分でなく、期間・回数やリスク・副作用の情報が付されていないもの
- 画像等をクリックしなければ詳細な説明が表示されないもの
各項目を書くときの細かな注意をまとめます。
- 症例の概要:年代・性別と、どの歯の何の治療かまで書きます。「〇〇の症例」という見出しだけでは、どこまでが同じ条件かが読み手に分かりません。年代と性別は、本人の同意の範囲で載せます(後の節で扱います)。
- 治療内容:検査・診断から、骨の移植の有無、仮歯、最終的な歯までの流れを書きます。結果の感想(「きれいになりました」)は治療内容ではありません。
- 期間・回数:その症例でかかった期間と通院の回数を数字で書きます。「個人差があります」とだけ書く形は、解説書の自由診療の事例で不十分とされています。[3]
- 費用:自由診療か保険診療かを書き、その症例でかかった総額と主な内訳を書きます。最低額だけの「〇円~」は、改善前の例です。
- リスク・副作用:その治療の主なものを並べます。Q&A(Q6-12)は、自由診療のデメリットとして2点だけを挙げた例について「上記のような記載のみでは、限定解除要件を満たしているとは認められません」と答えています。[2]院内で使っている説明書や同意書と同じ内容にそろえると、抜けが出にくくなります。
費用の欄は、ガイドラインの費用の書き方の決まりに合わせると、治療ごとに次のように整理できます。[1]ガイドラインは、標準的な費用が明確でない場合は「通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む。)までの範囲」を示すこと、麻酔管理料や指導料などが別にかかる場合や、通常併用する治療がある場合はそれらを含めた総額の目安を示すことを求めています。
| 治療 | 症例の費用欄に含めるもの | 書き方の例 |
|---|---|---|
| インプラント | 検査・診断、埋入手術、二次手術、骨の移植など付随する手術、上部構造(被せる歯) | 総額〇円(検査・診断〇円、埋入手術〇円、上部構造〇円を含む) |
| 矯正 | 検査・診断、装置、毎回の調整、治療後の保定装置 | 総額〇円(装置〇円、調整料〇円×〇回、保定装置〇円) |
| ホワイトニング | 1回あたりの費用と、その症例で行った回数 | 1回〇円×〇回=〇円(歯列等により変わる旨) |
| 被せ物・詰め物 | 材料ごとの1本あたりの費用と本数、土台や仮歯 | 1本〇円×〇本、土台〇円 |
表の区分は、ガイドラインの総額の考え方と事例解説書の例(インプラントの工程別の費用、ホワイトニングの1回あたりの費用)をもとにした整理です。金額は医院ごとに異なります
1件分の症例の説明は、次のひな形にそって書くと抜けが出にくくなります。
- 見出し:症例〇 〇代〇性 〇〇(部位)の〇〇治療(自由診療/保険診療)
- 写真:術前・術後(必要なら経過)。撮影の時期を添える(例:術前〇年〇月、術後〇年〇月)
- 来院時の状態:主な状態を客観的に(例:左下の奥歯が割れて抜歯となった)。本人の感想は書かない
- 治療内容:検査から仕上げまでの流れ
- 期間・回数:約〇か月・通院〇回
- 費用:総額と主な内訳(税込)
- 主なリスク・副作用:院内の説明書と同じ内容
- 担当:担当した歯科医師の名前(広告できる経歴の範囲で)
- 問い合わせ:この治療について問い合わせできる電話番号・メールアドレス
「来院時の状態」に患者さんの言葉(「ずっと痛くて悩んでいた」など)を入れると、体験談の扱いになるおそれがあります。事例解説書(21)は、医師による症例紹介の中に、患者の主訴として治療の効果に関する体験談を載せた例を禁止事例にしています。[3]状態は、歯科医師の所見として書きます。
動画で症例を紹介する場合も考え方は同じです。事例解説書の動画の章には、歯科のホワイトニングの例があります。工程、期間(毎月1回で3か月程度)、費用の幅、リスク・副作用(知覚過敏や色ムラ)を動画の説明欄に書いた形が改善例として示されています。[3]
限定解除の4つの要件は、症例ページでどう満たす?
歯科の症例ページは、ガイドラインの限定解除の4要件をページ全体で満たしたうえで、写真ごとの説明を付けて初めて載せられます。[1]限定解除とは、広告してよい事項の範囲を、決まった条件のもとで広げる仕組みのことです。
医療法第6条の5第3項により、医療機関の広告は法律と告示で認められた事項しか載せられません。ウェブサイトのように患者さんが自分で探して読む媒体には、医療法施行規則第1条の9の2の要件を満たせば範囲を広げられる、というのが限定解除です。[1]ガイドライン第3-3が挙げる4つの要件と、症例ページでの満たし方を並べます。
| 要件(ガイドライン第3-3) | 症例ページでの満たし方 | 満たさない例 |
|---|---|---|
| ① 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること | 医院のホームページ・症例ページに置く | 検索結果の広告枠(リスティング広告)やバナー広告 |
| ② 患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を明示すること | 電話番号・メールアドレスを、問い合わせを受ける旨とともに書く | 「予約専用」とだけ書いた番号、自動音声だけで折り返しのない番号 |
| ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等の情報を提供すること | 治療内容・標準的な費用・期間と回数を書く | 治療名と最低額だけ |
| ④ 自由診療に係る治療等の主なリスク、副作用等の情報を提供すること | 主なリスク・副作用を利点と同じ扱いで書く | 利点だけを並べ、リスクは「心配ありません」 |
③と④は、自由診療の情報を出す場合に限った要件です。[1]事例解説書は、一般的なウェブサイトであれば原則として①を満たすとしています。[3]一方でガイドラインは、インターネット上のバナー広告や、費用を払って検索結果に表示させるものは①を満たさないとしています。[1]症例写真を広告枠の画像や広告文に使うと、限定解除に頼れなくなります。
②の問い合わせ先には、Q&A(Q6-10)に細かい答えがあります。予約専用である旨だけが書かれ、問い合わせ可能である旨の記載がない電話番号は「患者等が容易に照会できるとは言えず、限定解除要件を満たしているとは認められません」とされています。[2]自動音声だけで折り返しのない番号や、受付の自動返信だけで答えのないメールも同じ扱いです。症例ページの下に「この症例・治療についてのお問い合わせ」として、つながる窓口を書きます。
マウスピース型の矯正装置などで、医薬品医療機器等法の承認を受けていない物(未承認医薬品等)を使う場合は、さらに5つの記載が要ります。未承認であること、入手経路(個人輸入ならその旨)、同じ成分・性能の国内承認品の有無、主要な欧米各国での安全性の情報、公的な救済制度の対象にならないこと、の5つです。[1]5つの記載について、ガイドラインは次のように求めています。②の入手経路では、医師などの個人輸入で入手した場合はその旨を書き、厚生労働省の「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページを案内します。④の安全性の情報では、主要な欧米各国で承認されている場合は各国の添付文書にある重大な副作用などを日本語で説明し、承認している国がない場合は重大なリスクが明らかになっていない可能性があることを書きます。⑤では、公的な副作用被害の救済制度の対象にならないことを書きます。[1]症例写真の説明にも、この5つを同じページで読める形で付けます。料金表の書き方全体は歯科の自費診療ページに書く料金・期間・リスクの決まりで詳しく扱っています。
説明はどこに置けばよい?リンク先・折りたたみ・小さな字は?
症例写真の説明は、写真のすぐ近くに、本文と同じ大きさの文字で、開かなくても読める形で置きます。[1]ガイドラインは、リンクを張った先のページへの掲載や、利点や長所と比べて極端に小さな文字での掲載を「採用してはならない」としています。
Q&A(Q6-11)は、限定解除の要件の記載は「患者が容易に視認できることが必要」とし、容易に視認できない例として次の3つを挙げています。[2]
- 文字が極端に小さく容易に確認が出来ないと考えられるもの
- 背景色と同じあるいは同系統の文字色で記載されているなど、配色に問題があると考えられるもの
- 意図的に情報量を増やし、必要事項を見逃す恐れがあると判断できるもの
事例解説書が挙げる、注意が必要な置き方と直し方は次のとおりです。[3]
| 置き方 | 事例解説書・ガイドラインでの扱い | 直し方 |
|---|---|---|
| 写真の下に「治療のリスク・費用についてはこちら」とリンクし、料金表で説明 | 注意が必要な事例(リンクを張った先に説明) | 写真のすぐ近くに、その症例の説明を書く |
| 画像をクリック・タップすると説明が開く | 広告できない例(クリックしなければ説明が表示されない) | 開かなくても読める位置に説明を出す |
| 複数の治療法の写真を並べ、説明を1つにまとめる | 広告できない例(23) | 写真1組ごとに説明を付ける |
| トップページのスライドやバナーに症例写真 | 注意が必要な事例(バナーに説明がない) | バナーには症例写真を使わない |
| 説明を薄い灰色や小さな字で書く | 容易に視認できない例(Q6-11) | 本文と同じ色・大きさで書く |
折りたたみ(アコーディオン)で説明を隠す作りは、事例解説書の「クリックしなければ詳細な説明が表示されない」形に近くなります。[3]スマートフォンでは、横並びの表が縮んで説明の字だけが小さくなることもあります。公開の前に、スマートフォンの実機で写真と説明が同じ流れで読めるかを確かめてください。確かめ方はホームページのスマホ対応を確認する方法にまとめています。
症例が多い医院では、症例を治療の種類ごとのページに分け、1ページに載せる症例の数を絞ると、写真と説明の対応が崩れにくくなります。1ページに何十件も並べると、スマートフォンでは説明を読み飛ばされやすく、Q&A(Q6-11)が挙げる「意図的に情報量を増やし、必要事項を見逃す恐れ」がある形にも近づきます。[2]
Q&A(Q6-11)は、患者の求めがあれば、限定解除の要件として記載したものと同じ内容を紙などで渡すことが望ましいともしています。[2]症例ページの説明を印刷できる形にしておくと、カウンセリングでも同じ説明を使えます。
保険診療の症例写真や、診療風景の写真にも説明は要る?
保険診療の症例写真にも、治療内容・費用・主なリスクの説明を付けるのが安全です。[1]ビフォーアフター写真の決まりそのものは、自由診療に限っていないためです。
限定解除の要件③④は「自由診療」の場合に限られます。しかし省令第1条の9第2号と、ガイドラインの「詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない」という文は、保険か自費かを分けていません。[1]保険の詰め物や歯周病の治療の写真にも同じ考え方が当てはまる、と読むのが自然です。
保険診療の症例で書く内容の例です。
| 項目 | 保険診療の症例での書き方の例 |
|---|---|
| 治療内容 | 歯周病の基本治療(歯石の除去・歯ぐきの検査)を行った |
| 期間・回数 | 約3か月・6回(その後は定期的な検査) |
| 費用 | 保険診療。窓口での負担は、負担割合と治療の内容によって変わる旨と、目安を問い合わせできる窓口 |
| リスク・副作用 | 治療後にしみる・歯ぐきが下がって見えることがある、など院内の説明と同じ内容 |
どこまで書けば足りるかは個別の判断になります。迷う症例は、医院を所管する保健所などの医療広告の相談窓口に確かめてください。厚生労働省は、医療広告の相談窓口の一覧を広告規制のページで公開しています。[4]
診療風景の写真は、別の扱いです。Q&A(Q3-14)は、検査や手術を含む診療風景の写真は広告可能としつつ、「診療風景であっても、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等を掲載することは、治療の効果に関する表現に該当するため、広告できません」としています。[2]治療中の口の中や、仕上がった歯が大きく写った写真を「院内の様子」として載せるときは、効果を見せる写真に見えないかを確かめます。
待合室に貼る症例の写真や、院内で配る冊子は扱いが違います。ガイドラインは、医療機関の内部の掲示や内部で配るパンフレットは、受け手が既に受診している患者等に限られるため、ふつうは広告に当たらないとしています。[1]ただし、同じ掲示物を撮影してホームページやSNSに載せると、ウェブサイトの広告として扱われます。院内の掲示用に作った症例の写真を、そのままホームページへ流用しないように注意します。
院内の設備の写真、スタッフの写真、医院の建物の写真は、広告できる事項を写真で表すものとして扱われます(Q3-13・Q3-14)。[2]ただしガイドラインは、他の病院の写真は認められないとしています。[1]院長や歯科医師の経歴の書き方は院長紹介の経歴と専門医資格の書き方を参照してください。
加工した写真・素材写真・症例モニターの募集はどう扱われる?
加工した症例写真や、治療結果に見える素材写真は、厚生労働省の事例解説書が虚偽広告の例に挙げています。[3]虚偽広告は医療法第6条の5第1項で禁じられ、ガイドラインは罰則付きで禁じられていると説明しています。[1]
事例解説書(3)が虚偽広告の例として挙げる形は2つです。[3]
- あたかも効果があるかのように見せるため、加工・修正した術前術後の写真等
- 実際には施術していないフリー素材の画像やイラスト、人物写真を分割して片方だけ美しく修正し、治療の成果のように見せたもの(例は歯のホワイトニングのページ)
色味や明るさを術前と術後で変えるだけでも、仕上がりの印象は変わります。ホワイトニングや被せ物の症例は、照明の色で歯の白さの見え方が大きく変わるため、撮影の条件をそろえることが大切です。撮影と掲載の基本をまとめます。
- 撮影の条件を決める
照明・角度・距離・カメラの設定を、術前と術後で同じにします。院内で撮影の手順書を作っておくと、担当者が変わってもそろいます。 - 掲載前の処理をそろえる
切り抜きや向きの調整は、術前と術後に同じ処理だけをかけます。歯の色や明るさを片方だけ補正しません。 - 素材写真の置き場所に注意する
素材サイトの笑顔の写真を、自院の治療結果に見える位置に置きません。イメージ写真には「イメージ」と添えます。 - 元の写真を残す
加工していない元の写真を保存しておきます。問い合わせや指導があったときに、元の状態を示せます。
術後の写真は、撮影した時期も添えます。治療を終えた直後の写真と、数年たった写真では見え方が違うことがあるためです。術後の時期が書かれていないと、読み手はいつの状態なのかを判断できません。経過を追った写真がある場合は「術後1か月」「術後1年」のように並べ、どの時点の写真かを写真のすぐ下に書きます。写真の大きさも、術前と術後で同じにそろえます。片方だけ大きく見せると、比べたときの印象が変わるためです。
写真の権利の考え方はホームページの画像・写真の著作権を参照してください。
症例写真を集めるために「症例モニター」を募る医院もあります。事例解説書(34)は「症例モニターとして治療を受ける場合、通常の費用から割引される旨」を強調した広告を、ガイドラインの「費用を強調した広告」の注意事例に挙げています。[3]ガイドラインは費用を強調した広告の例として「今なら○円でキャンペーン実施中!」「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」などを挙げ、品位を損ねる広告として厳に慎むべきとしています。[1]
| 例 | 書ける例 | 書けない・避ける例 |
|---|---|---|
| 例1 | 症例① 30代女性。左下奥歯のインプラント治療(自由診療)。期間 約6か月・通院10回。費用 総額〇円(内訳…)。主なリスク:出血、腫れ、痛み… | インプラントで見違えるほどきれいに(写真のみ) |
| 例2 | 術前・術後とも同じ照明と角度で撮影しています | 術後の写真だけ明るさを上げる・歯の色を補正する |
| 例3 | 症例写真の掲載にご協力いただける方を募集しています(費用は通常どおり) | モニター価格なら通常の半額 |
| 例4 | 当院の〇年〇月〜〇年〇月のインプラント手術件数 〇件 | 当院のインプラント手術の成功率は97.5%(根拠の説明なし) |
どの症例を載せるかにも注意が要ります。Q&A(Q2-9)は、口コミについて、医療機関に便益を与えるような感想を取捨選択して掲載し強調することは虚偽・誇大に当たるとしています。[2]症例写真の選び方について同じ形の記載はガイドラインに見当たりませんが、仕上がりの良い症例だけを並べると、見た人が典型的な結果だと受け取りやすくなります。治療の種類ごとに、よくある経過の症例を選び、期間や回数が長くかかった症例もあれば載せる、という方針を決めておくと説明がしやすくなります。
表の最後の行の「成功率」は、事例解説書(2)で「データの根拠を明確にしない調査結果」として虚偽広告の例に挙げられている表現です。[3]医療機関で行われた手術の件数は、Q&A(Q3-17)で期間を併記すれば広告可能とされています。[2]
患者さんの同意はどう取る?口元だけなら同意は要らない?
症例写真をホームページに載せるには、原則として患者さん本人の同意が必要です。[5]口元だけの写真でも、他の情報と照合して本人が分かる場合は個人情報として扱われます。
個人情報保護委員会と厚生労働省のQ&A(2026年4月一部改正)は、写真について「個人を識別できるものであれば個人情報に当たります」とし、ホームページへの掲載などで第三者の閲覧に供するときは「原則として本人の同意を得る必要があります」としています(Q4-15)。[5]
同じQ&A(Q2-11)は、顔写真に一定のマスキングをしてそれ単体では個人を識別できないようにしても、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人(患者・利用者等)を識別することができる場合には」個人情報に当たるとしています。[5]歯並び、金属の位置、治療の経過と、年代・性別・治療時期の組み合わせで、本人や家族が見れば分かることは十分にあります。
さらに、病歴は個人情報保護法の「要配慮個人情報」です。要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見などが生じないよう取扱いに特に配慮が要る情報のことで、ガイダンスは診療録などの診療記録に記載された病歴などがこれに当たるとしています。[6]要配慮個人情報の取得や第三者への提供には、原則として本人の同意が要る、ともされています。[6]
症例写真の同意書に書く4点
4つそろって掲載口頭の了解だけで掲載を始めない
実務の流れは次のとおりです。
- 撮影の前に説明する
治療の記録として撮る写真と、ホームページに載せる写真は目的が違います。記録の撮影の同意と、掲載の同意を分けて取ります。 - 書面で範囲を決める
載せる写真、添える情報、載せる場所、期間を書いた同意書に署名をもらいます。 - 取り下げに応じる
取り下げの申し出があれば、ホームページとSNSの両方から外し、外した日を記録します。 - 未成年の症例は保護者とも確かめる
子どもの矯正などは、本人と保護者の両方に説明し、保護者の同意を書面で残します。
同意書の文の例です。医院の実情に合わせて直して使ってください。
当院は、あなたの治療の記録として撮影した口の中・口元の写真のうち、下記の写真を、下記の情報とともに、下記の場所に掲載します。掲載に同意しない場合も、治療の内容や費用は変わりません。同意はいつでも取り下げることができ、取り下げの申し出を受けた日から〇日以内に掲載をやめます。
掲載する写真:術前(〇年〇月撮影)・術後(〇年〇月撮影)
添える情報:年代・性別・治療の部位と内容・期間と回数・費用・主なリスク
掲載する場所:当院ホームページの症例紹介ページ/当院公式Instagram
掲載の期間:〇年〇月まで(延長するときは改めて確認します)
同意書の控えは、症例ページの写真と対応がつく形(症例番号など)で保管します。写真を差し替えたり、掲載先を増やしたりするときは、同意書の範囲に入っているかを毎回確かめます。
勤務医の時代に担当した症例を、開業した医院で載せたい場合は、前の勤務先の了解と、患者さん本人の新しい掲載先への同意の両方を確かめます。プライバシーポリシーに、症例写真は同意を得たうえで載せる旨を書いておく方法もあります。書き方はプライバシーポリシーは必要?個人情報保護法で書く項目を参照してください。
Instagram・動画・バナーに症例写真を使うときの決まりは?
歯科医院の公式SNSや動画で症例写真を使うときも、写真の近くに治療内容・費用・主なリスクを、ひとまとまりで読める形で付ける必要があります。[3]事例解説書(第6版)は、SNSと動画の広告に1章を充てています。
事例解説書(39)は、SNSの医療広告を「プロフィール」「投稿」「返信」の3つで整理しています。[3]ビフォーアフター写真は、プロフィール・投稿・返信のどれか、又はその組合せで、画像の付近に治療等の内容と費用、主なリスク・副作用の情報が「一体的かつ一覧性をもって」なされていなければ違反となる、とされています。[3]
| SNSでの載せ方 | 事例解説書での扱い |
|---|---|
| 1つの投稿の中に、写真と内容・費用・リスクをまとめる | 一体的かつ一覧性をもった情報提供の例 |
| プロフィール欄に費用・リスクをまとめ、各投稿でその場所を示す | 掲載場所を明示し、その近くで一体的に提供している例 |
| 写真は投稿、費用とリスクは「詳細はホームページで」とURLだけ | 必要な情報が一体的になされていない例 |
| 写真はInstagram、リスクはX、費用はホームページと分散 | 複数のSNSに分散し、1つでは確認できない例 |
事例解説書は、字数の制限で自分の投稿に返信を重ねて説明する形や、ハッシュタグの部分も医療広告に当たるとしています。[3]投稿の内容と関係のないハッシュタグで人を集めることは不適切とされています。院長や歯科医師の個人のアカウントでも、医療機関や医師が特定でき、受診を誘う意図があれば対象です。
検索やAI検索(ChatGPTやGoogleのAIによる概要など)で症例ページを見つけてもらうには、説明を画像の中ではなく本文の文字で書くことが前提になります。説明を写真の上に文字として焼き込んだ画像は、検索のしくみが読み取りにくく、スマートフォンでは字が小さくなりがちです。写真には、何の写真かを短く書いた代替テキスト(alt属性)を付けます(例:「症例1 左下奥歯のインプラント治療 術前」)。書き方は画像のalt属性とは?代替テキストの書き方を参照してください。症例ページの見出しに治療名と部位を入れておくと、「インプラント 奥歯 期間」のように調べた人が目的の症例にたどり着きやすくなります。
Googleビジネスプロフィール(Googleマップの医院の情報)に医院が自分で載せる写真や投稿も、同じ考え方で扱うのが安全です。ガイドラインは、受診を誘う意図があり(誘引性)、医療機関の名前が特定できる(特定性)情報を医療広告としています。[1]医院が投稿する症例写真はこの2つに当てはまりやすく、写真の近くに説明を付けにくい場所でもあります。地図の情報には院内や外観の写真を載せ、症例写真は説明の付いた症例ページへ案内する形にすると、決まりとの食い違いが起きにくくなります。地図の情報の整え方はGoogleビジネスプロフィールの登録方法にまとめています。
トップのバナーと、そこから移る公式SNSの両方に、説明のない同じ症例写真を載せた例が、事例解説書(24)で注意が必要な事例とされています。バナーにもSNSの投稿にも、説明の付かない症例写真は使いません。[3]
SNSに載せる前に、次の4つを投稿ごとに確かめます。
- 写真の近くに説明があるか
1枚目の画像か本文の最初に、治療内容・期間と回数・費用・主なリスクがあるか。 - 説明が1か所で読めるか
別のSNSやURLの先にだけ説明を置いていないか。 - ハッシュタグが内容と合っているか
治療と関係のない話題のタグで人を集めていないか。 - 患者さんの同意の範囲にSNSが入っているか
同意書の「載せる場所」にSNSが書かれているか。
症例写真の決まりに反するとどうなる?最初に何から直す?
症例写真の決まりに反すると、まず保健所などから行政指導を受け、従わなければ中止命令・是正命令、さらに罰則へ進みます。[1]厚生労働省は、ネットパトロールで医療機関のウェブサイトを見ており、一般の人からの通報も受け付けています。[3]
事例解説書によると、厚生労働省は2017年度(平成29年度)から「医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業」としてネットパトロールを行っています。[3]事例解説書の事例は、このネットパトロールで集まった実際の事例をもとに作られたものです。
ガイドラインが定める流れは、まず任意の調査と行政指導(広告の中止・是正を求める)で、従わない場合や悪質な場合に、報告命令・立入検査、期限を定めた中止命令・是正命令へ進みます。[1]罰則は、虚偽広告や中止・是正命令に従わなかった場合が6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(法第87条第1号)、報告命令・立入検査への違反が20万円以下の罰金(法第89条第2号)です(ガイドラインの文言は「6月以下の懲役」のままですが、2025年6月の刑法改正で懲役は拘禁刑に変わっています)。[1]
保健所などの相談窓口に確かめるときは、次の物を用意しておくと話が早く進みます。対象のページのURLと画面の写し(スマートフォンとパソコンの両方)、症例の説明文、同意書の書式、迷っている点を1文で書いたもの、の4つです。電話で相談する場合も、どのページのどの写真のことかを先に伝えます。窓口の助言を受けたら、日付と担当の部署、受けた助言をメモに残しておくと、後でページを直すときや、制作会社に依頼するときの根拠になります。
なお、ホームページに「医療広告ガイドラインを遵守しています」と大きく書くことは、Q&A(Q6-13)で過度な記載は誇大広告に該当する可能性があるとされています。[2]厚生労働省のシンボルマークも、資料の転載などの場合に限られ、それ以外の目的では使えないとされています。
症例写真を載せる前の確認順
7つの確認症例ごとの判断は所管の窓口に確かめます。
点検は、上の図の順に進めると手戻りが少なくなります。症例写真は件数が増えるほど、古い写真の説明が料金の改定に追いつかない、といったずれが起きやすい部分です。料金を変えたら症例の費用の欄も直す、という手順を院内で決めておきます。症例写真のほかに患者さんの声を載せている場合は、クリニックのホームページに口コミや体験談を載せられない理由もあわせて確かめてください。開院の前に症例ページを準備している場合は、開業医のホームページを開院の何か月前に公開するかも参考になります。
よくある質問
- 歯科のInstagramに症例写真を投稿するとき、説明はプロフィール欄にまとめてよいですか?
- 厚生労働省の事例解説書は、プロフィール欄に必要な情報をまとめ、各投稿でその掲載場所を示し、近くで一体的に読める形を例に挙げています。ただし、投稿ごとに治療内容や費用が違う場合は、その症例の説明を投稿の中に書くほうが確実です。別のSNSやホームページへ説明を分けて置く形は、事例解説書で分かりにくい例とされています。
- 料金表のページに費用をまとめておけば、症例写真ごとに書かなくてもよいですか?
- 医療広告等ガイドラインは、説明をリンクを張った先のページへ掲載する形式を採用してはならないとしています。事例解説書も、料金一覧のページに説明を置いて症例写真からリンクしている例を、注意が必要な事例に挙げています。症例ごとに写真の近くへ書いてください。料金一覧のページは、全体の目安を見るための一覧として別に置いておくと便利です。
- 勤務医の時代に担当した症例写真を、開業した医院のホームページに載せてもよいですか?
- 前の勤務先の了解と、患者さん本人の同意の両方を確かめる必要があります。個人情報のQ&Aは、写真をホームページに載せるときは原則として本人の同意が要るとしており、前の勤務先での同意が新しい医院のサイトを含んでいるとは限りません。費用の欄も、自院の料金と違えば誤解のもとになります。迷う場合は、新しく撮影した自院の症例から載せ始めるのが確実です。
- 歯科医院のホームページに「症例数〇〇件」と書いてもよいですか?
- 厚生労働省のQ&Aでは、医療機関で行われた手術の件数は、期間を併記すれば広告可能事項の範囲で広告でき、1年ごとに集計して複数年を示すのが望ましいとされています。一方、医師個人の手術件数は広告できず、限定解除の要件を満たす場合も根拠を示して実証できる必要があります。件数を書くときは、集計の期間と数え方(本数か人数か)を併記します。
- 症例写真の顔の部分を切り取れば、患者さんの同意は要りませんか?
- 個人情報のQ&Aは、顔写真にマスキングをしても、他の情報と容易に照合して特定の個人を識別できる場合は個人情報に当たるとしています。歯並びや治療の経過、年代・性別の組み合わせで本人が分かることもあるため、口元だけの写真でも同意を取って載せるのが安全です。同意書には、口元だけの写真であることも書いておくと、本人が掲載の範囲を判断しやすくなります。
- 症例写真の説明に「個人差があります」と書けば十分ですか?
- 十分ではありません。厚生労働省の事例解説書は、期間を「患者様の状態により異なります」とだけ書いた例を、限定解除の要件を満たしていない例に挙げています。その症例でかかった期間・回数・費用を数字で書き、そのうえで個人差がある旨を添えます。期間や費用が長く・高くなった場合の条件(骨の移植が要った、など)も書いておくと誤解が減ります。
あなたのサイトは、いま何点?
URLを入れるだけで、検索とAIの回答で見つけてもらうための項目を無料で点検します。登録は要りません。
今のサイトを無料で診断する →ホームページを作りはじめる- 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(厚生労働省、2026年3月30日最終改正・2026年10月29日確認)
- 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(厚生労働省、2026年3月改定・2026年10月29日確認)
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(厚生労働省、2026年3月作成・2026年10月29日確認)
- 医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省、2026年10月29日確認)
- 「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に関するQ&A(事例集)(個人情報保護委員会・厚生労働省、2026年4月一部改正・2026年10月29日確認)
- 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会・厚生労働省、2026年4月一部改正・2026年10月29日確認)